読書:三本の矢

読書:三本の矢

アメリカも金融危機?銀行危機?が続いているから、って訳じゃないけど偶然本作を再読していて、読了しました。

商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
すべては大蔵大臣の失言が発端だった。国会の予算委員会において、蔵相の瑞田が、かねてより経営難が噂されていた日本不動産金融銀行の状態が「極めて危険なレベルに達しつつある」と発言したのだ。議場は騒然とし、記者たちはニュースを社へ報ずべく出口へ殺到する―まさしく、「昭和金融恐慌」の再現だった。日本不動産金融銀行は倒産へと追い込まれ、未曾有の金融パニックが日本全土に波及する。大蔵省は対応策を策定すべく、緊急チームを編成、事態収拾に向けて動きはじめる。その一方で、驚くべき事実が判明する。瑞田が読み上げた答弁書の中身は、何者かの手によって差し替えられていたのだ。となれば、蔵相の問題発言は「失言」などではなく、周到に仕組まれた陰謀だったことになる。いったい誰が、何の目的で―?現実の日本を襲う「危機」を現在進行形でシミュレートする、驚愕の金融経済サスペンス巨篇。

内容(「MARC」データベースより)
全ては大蔵大臣の失言が発端だった。予算委員会の答弁が銀行を倒産へと追いこみ、金融パニックが日本全土に波及。だが大蔵省の緊急対策チームは、大臣の答弁書が何者かによって差し替えられていた事実を突き止める。

あらすじ(Wikipediaより)
経営難が噂される日本不動産金融銀行について経営悪化を認める大蔵大臣の失言により金融パニックが日本全土に波及。大蔵省は対応策を策定すべく、緊急チームを編成し、事態収拾にあたる。その一方で、大蔵大臣の答弁書が何者かによって差し替えられており、大蔵大臣の問題発言は作為的な陰謀であることが判明する。

匿名の大蔵官僚が書いたとしか思えない、と当時話題になった本。

発売1998年と、ちょっと古いですが今でも面白い、ので再読していました。
(1998年なのでアベノミクスの三本の矢とは全くの無関係)

まず国会会期中の大蔵官僚がどんな一日を送っているかの詳細な描写から。

国会議員から質問の通告があって、その質問をヒアリングに行くのは入省1年目、
どころか入省して一月ぐらいの若造。
国会議員の相手ぐらいキャリア官僚なら余裕でしょ?的なニュアンス。

そしてそこからが大変!

質問に該当する省庁、各局は待機で質問の回答作成。
政治的に高度なレベルだと課長や局長、事務次官にまで上っていく…のでその間は関係官僚は帰れない…。

主人公の紀村は主計出身だが銀行局へ一次的に配転されている(銀行局銀行課補佐)。
そして入省して来たばかりの若手を教育する、という筋立てで官僚の仕組みが分かりやすく説明されている。

で回答内容が固まってからもお役所の役所用語辞典に沿った文章で文書作成&プリント。
(大臣ごとにフォントの大きさの指定も…)

それらの確認が全て終わって関係各所には解除の放送が…。

それからその文書を秘書課に持っていて大臣と秘書官に渡す手はずを。

全く問題ない回答だったはず…
ある議員から無理やりねじ込まれたある金融機関の状態についての質問。

上記の紀村も民間のことは預かり知らず、ということで突っぱねる回答が普通なのだが…。
金融ビッグバンも数年後に控え、倒産した金融機関も近年出た、ということでどこまで踏み込むのか…
などを踏まえ若手二人に回答を作成させるのですが。15分以内に作れ、とかいう感じで。

若手作成の回答に紀村は一読するなり、採点結果は一人は0点、もう一人は50点、とかだったかな?
受験戦争に打ち勝ってキャリア試験でもトップで大蔵省に入ったのに無常なダメ出しでがっくりくる新入り。

その回答書の一部が何者かに差し替えられ、その金融機関にはリスクがある、的な内容に。

そこから金融パニックが始まる…。

そして主計局と銀行局の権力闘争…。

予算を握っている主計が権力的には断然力が強いのですが、金融、銀行、証券などについての知識はほぼゼロ…というか全く無い…。
(その頃あった長期信用銀行、信託銀行、普通銀行の違いや、長短統合、普信統合の意味すら分かってない…)

主計局と銀行局の初の省内対策会議の際に。元主計局で現銀行局の紀村に、主計サイドの元同僚が上記の用語の説明教えてくれ…とか言うレベル!

取り付け騒ぎも起きつつある大蔵省としては超緊急で対策を出さないといけない…。
銀行局は速攻で対策案を練り始めるが…
それに対して金融にはゼロ知識だが権力を持ってる主計サイドとの駆け引き。

そして秘書課…。秘書課の役割。主人公の紀村も入省時は秘書課…。

大蔵省の秘書課とは何か?そして巨大な陰謀に巻き込まれていく主人公紀村…。

今読んでも非常に面白い名作です!

途中、ペダンティックで詳細に入り渡った経済論議や米国教授の書いた有名な本についてや理論の話が冗長な部分がありますが、一応作品上必要な箇所なんですが、その辺は流し読みでも可。

紀村の高校の友人で民間研究所の佐室博士が何回か登場するのですが、彼の超天才っぷりと超奇人っぷりが笑える!

紀村に向かって君程度の頭脳では理解できないだろうが…とか君に説明するには32分17秒掛かる、とか。
紀村がその時間の根拠は?と聞くと、それに回答するには〇〇分〇〇秒掛かるが…とかw

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